焼香

2008.1.7

「焼香」は仏教儀礼には欠かせないものです。
どうする・何回する・順番など問うこともありますが先ずは「焼香」の由来などを・・・。

焼香とは「香」です、「香」は燃やしたり塗ったりしながら嗅覚で宗教観を誘うものです。本来の目的は死臭に対抗することが大きかったと推察できます。
死臭が鬼籍に連れて行くと連想するのか生理的に嫌悪する「におい」なのか、命からもっとも遠い「におい」を打ち消し紛らす為に香は開発進歩してきたと思うのです。
あるいは武士の間で「香」が流行った史実は、精神的な希求より先ずは戦場での忌まわしさを軽減することが素地ではなかったかと思うのです。死の恐怖や連想を弱める力が「香」にあると思うのです。

仏教が渡来して定着していく中いくつかの宗派ができ、いつの間にか葬儀と先祖供養が主な役目となりました、その出発は「死」です。
「死」は仏教の要因や展開に大きく関わってきました。死生観は有史以前からあり文明文化の歴史のなか全世界に数多に創られ、また今後も新たな死生観は生まれてきます。時代や民族や宗教によって死生観の相違はありますが「死」に対する基本的な反応(恐れなど)と物理的な変化(腐敗)は同じです。

近年の「死」は希薄になってきました、病院などで亡くなる場合が8割を越え「死」は葬祭業者の手で手厚く護られ円滑に通夜・葬儀・火葬となり数夜で死体は焼骨となります、火葬場も近代化され煙突はなくあの独特のにおいも非常に少なくなって来ました。
しかし死者の枕元には必ず香が焚かれています、通夜・葬儀・野辺送りと香を焚き親類縁者や弔問者は焼香を欠かしません。

香りは鼻から躰に入り作用します。嗅覚器官で伝わる「におい」は微量なモノですが躰にダイレクトに作用したり本能に結びつくモノがあります、ゆえに香は医薬とか麻薬の範囲もあり豊かな先人たちはこれらの効能をより高めるためにも「神仏」の供物にして祈祷や供養を修する時に供えるようになりました、死の恐怖や連想を弱める力を持ち礼拝に欠かせなくなった「香」は香道と云った芸道も確立し逸品の世界観を創りました。

葬儀が済み骨となって供養が始まります、初七日から七日廻りを七回重ね生と死の狭間が満る満中陰を迎えてあの世になり、一周忌、三回忌、七回忌・・・と供養が始まります、この時も香を焚き焼香があります。この焼香は香りであの世に逝った故人を引き寄せる招魂の意図があります、極上の香りを出し草葉の陰から呼び寄せるのです。それから焼香の煙は天上の方向に上がります、昇華する香りに成仏の願いや供物を乗せ届けようとするのです。

最後になりましたが焼香手引き

まず焼香場所に進み、(回し焼香も同じ)対象に黙礼などの仕切をして三度します。左手を添えて戴く所作などは無くてもよいですし一度でもよいです、コツは迷わず確実に香を火種に落とすことです。小さな子供連れの場合は子供は横に連れ添わすだけで充分です、指に付着した香(汗などで)はさらりと落とすか無視しましょう。

戒香・定香・解脱香(かいこう・じょうこう・げっだこう)と唱え三度します。
戒とは「言行をつつしみ清浄な気持ちで一つまみ火種に落とします」定とは「こころを鎮め本来は一切清浄と察して一つまみ火種に落とします」解脱とは「本来は一切清浄と気付くなら因果から解放されると一つまみ火種に落とします」